アルペジオという用語、分散和音のことですが、ギターだとテクニックと結びついて使われます。
具体的には、ギターでアルペジオと言ったら和音の構成音すべてを同時にコードとして押さえて、それを別の弦で弾くというのが基本にあると思います。
1つの和音でアルペジオを弾くのに、左手はコードを押さえたら動かさないで、あとは右手の指だけ動かす。
これが基本です(あくまで私個人の見解ですが)。
これを踏まえて、アルペジオという言葉について「あれ?」と思ったタイミングがこれまで2回ありました。
1度目はヴィラ=ロボスのエチュード第2番がアルペジオの練習曲だというのを見たとき。この曲だと、和音ごとの音域が広すぎて、1つの和音の構成音すべてを弾く過程でどうしても音を伸ばせない構成音が出てきます。
そのため、同じ和音内で頻繁に左手を押さえ直す必要があります。
それが少しだったら例外的なアルペジオという感じなのですが、同じ和音なのに途中でポジション移動するというような動作は、ギターでいうアルペジオのイメージにはそぐわないなと思っていました。
そして2度目は対位法を学習していたときのことです。旋律を作るときに「アルペジオは避ける」というような表現があったんですね。
対位法では、跳躍が2回続くとアルペジオとしてみなされるようでした。
あくまで1つの声部の話をしていますから、跳躍しても音が重なるというわけではありません。そこで、アルペジオといっても和音の構成音が同時になる瞬間があるとは限らないのだなということを知りました。
この対位法のことがあって、ヴィラ=ロボスの練習曲第2番がアルペジオだというのに違和感がなくなりました。
ギターでは、アルペジオ練習といえば冒頭に書いたような(左手はそのままで右手の指を動かす)ものになるのですが、音楽一般では、どういうテクニックで弾くというのは関係なくて、和音の構成音すべてが同時ではなく、ずれて鳴らされたらそれはアルペジオだということのようです。
フルートのように(特殊奏法を除いて)同時に1音しか出せない楽器でもアルペジオという用語を使うことからも、そのことは分かります。
今、パッとアルペジオ意外の例は思いつきませんが、ギターの世界だけに捉われていると、音楽を、ギター音楽ではなく音楽として捉えるときに思わぬ落とし穴があるかもしれないと思うわけです。