作曲家(や演奏家)の伝記。
かつては、もっともつまらないと思っていたジャンル。
それが今は、もっとも面白いと思うジャンルになりつつあります。
最近伝記を読むのにハマっているきっかけは、少し前に伝記(?)映画を観たことです。
映画は短時間で楽しめるように実際には起こっていない出来事が描かれていたり、実際に起こったことでも組み合わせたり組み替えたりと脚色が施されています。
そこから感銘を受けたものの、その相手が実在の人物とは異なっているとしたら、なんだか微妙な心持ちがしました。
そこで、少しでも史実に則った情報を得ようと思ったら、自然と書籍の伝記を読もうという発想になりました。
伝記というのは、小説のように、話の筋すべてが読者を楽しませるように都合よくことが運ぶものではありません。それが、かつて自分が伝記はつまらないと思っていた要因であったと思います。
ところが、クララ・シューマンを描いた『真実なる女性 クララ・シューマン』が、ネットで名著だと絶賛される記事も目にしていたところ、想像以上の名著で、まず、物語としてぐんぐんと引き込まれました。
そして、多くの資料(本人の手紙や日記など)に基づいて書かれているので信憑性が非常に高い。
芸術家が何を考えて、どんな日々を過ごしていたのか。
リアルな質感でもって伝わってきました。
この本を読んで、ピアニストとしてのクララのイメージは、それまで持っていたよりも遥かに優れた存在に変わりました。さらに、生き方そのものにも憧れを抱きました。
もちろん、いくらクララが日記や手紙で自分の心情を細やかに残しているといっても、人生のすべてがそこに記されているわけではありません。
それでも、仮にそれが一面だけだったとしても、この本を読んだ誰もが、芸術家として、そして人間として、クララの生き方を尊敬してやまないのではないかと思います。
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