2018年6月30日、サントリーホール。
とても良いコンサートを聴いてきました。
「ハイドン・フィルハーモニー」というオーケストラによる、オールハイドンのプログラムでした。
このオーケストラについてネットで調べてみても、ほとんど情報が出てこなくて、このコンサート用の情報が出てくるだけ。唯一見つかった感想は、芸術監督がアダム・フィッシャー氏だった頃は良かったというもので、現在の二コラ・アルトシュテット氏になってからのことは、ほぼ分かりませんでした。
「ハイドン・フィルハーモニー」は、ハイドンが生きていた頃に仕事の場としていたエスターハージ(エステルハージ)城を拠点としています。
ウィーン・フィルとハンガリー国立フィルのメンバーによって創立されたとのことですが、現在の状況は不明。聞いてみないと何もわからないという状況でした。
今回のコンサートの目玉企画として、エスターハージ家のコレクションの展示がありました。ハイドンの自筆譜(閉じていたので見えるのは表紙のみ)や、エスターハージ家との契約書、そしてバッハのロ短調ミサ曲の自筆譜(!バッハは間違いありませんが、曲は記憶違いでなければ。閉じていたので見えるのは表紙のみ)、エスターハージ家の紋章の入ったヴァイオリン(紋章がどこに入っているかは分かりませんでした)など、通常見る機会はまずないようなものが見れました。
そして、演奏。プログラムは冒頭に書いた通り、全曲ハイドンです。メンバーが入場してきて、古楽器を使っていることが分かりました。バルブシステムが開発されるまえのホルン(ナチュラルホルン)とトランペット。ティンパニも現在のものより小ぶりで太鼓の数が少なかったと思います。
つまり、当時の響きをよく再現する編成になっていました。
こうなると、古楽器(ヴァイオリン等は違うと思うので一部の楽器ですが)を使った古典の曲の演奏ということになります。昔を懐かしむような、古き良き時代の音楽といった趣の演奏会になるのかなあと思いました。
ところが、私が持った感想はこうでした。
「ハイドンってかっこいいな」
こんな感想をハイドンに対して抱くことに、ある種の驚きを感じました。古臭い感じなど、一切ありませんでした。非常に洗練された表現で、現代音楽にも造詣が深いという二コラ・アルトシュテット氏の演出あってのことだと思います。
中でも圧巻だったのが、チェロ協奏曲第1番 ハ長調。二コラ・アルトシュテット氏による弾き振りでした。
左手でチェロを持って指揮を振り、座ったら情熱的にチェロを奏でます。古典の曲にしてはアグレッシブな表現でしたが、それが控えめな表現のオーケストラパートと絶妙な対比で、曲の魅力を引き出していました。
カデンツァ部分など、どう考えても古典時代にはやっていないだろうと思われるような超絶技巧を駆使した演奏だったのですが、これが違和感なく曲の一部となっていたのだから不思議です。
そして、彼の指揮がまた、とても躍動感にあふれているのです。
一つ書き忘れていたのですが、オーケストラは立って演奏していました。座っていたのはチェロとコントラバスとティンパニくらいだったと思います。室内楽のようなまとまった雰囲気、そして、なにより音楽を楽しんでいる感じが伝わってきました。
古楽器で古典の名曲を、当時の演奏で楽しむというような、堅い雰囲気の演奏会ではありませんでした。
古楽器も使って当時の響きを再現しつつも、現代的な解釈で、古典の名曲の新たな魅力を見せる、そんな演奏会でした。
とにかく、エンターテイメントとして素晴らしかったです。
ネットで情報が見つからなかった話を書きましたが、このコンサートについてもそんなに積極的に宣伝はしていないのではないかと思われます。席は5割は埋まっていないかなという程度の埋まり具合でした。
サントリーホールにおけるオーケストラ公演というのが、普通どの程度席が埋まるものなのか分かりませんが、これほどのクオリティーの演奏会だということを考えると、これはもったいないなと思いました。
もし、ハイドン・フィルの演奏会に行ける機会があったら、是非とも足を運んでみてください。心からお勧めします。