私は純粋に楽しむためだけのためにコンサートに行くということはなくて、どうしても演奏者として何かを得たいという気持ちで演奏を見たり聞いたりしています。
昨日行ったのは、学内で開催されていた大学院のピアノ専攻によるコンサートです。
青柳晋先生とその教え子による、ベートーヴェンピアノソナタのコンサートでした。演奏者は、青柳先生と、洗足音大の大学院2年生が3人、東京藝大の大学院1年生が2人の計6人です。
それぞれが、ピアノソナタを1作品全楽章演奏するという形式で、6曲のピアノソナタを聞いたことになります。
これがかなり興味深いコンサートで、まず、同じベートーヴェンという作曲家が書いた、ピアノソナタという同じジャンルの曲のみが演奏されたのですが、曲ごとに個性があって、全く違った魅力を持っていました。
そして、演奏者にも個性があるので、なおさらそれぞれの曲が違った感じに聞こえました。
あまり突っ込んだ話はここには書きませんが(興味があったら直接聞いてください)、演奏というのはいろいろなものを伝えてくるものだよなというのが、つくづく実感されました。
ところで、今回演奏されたのはソナタです。ソナタというと、第1楽章はソナタ形式であることが一般的でしょう。
ソナタ形式というものについては中高の音楽でも勉強してはいるのですが、これを理解しているのといないのでは、ソナタ形式の曲の楽しみが大きく変わってくると思います。
音楽というのはただ感じればよいのであるから、形式なんてものは、演奏者が知っていればよくて。聞く人は知らなくてよい
そういう考え方もあると思います。私もそう思っていたのですが、何も考えずに聞くには、ソナタは少し長すぎると思います。
ということで、音楽の専門家以外の方向けにソナタ形式について書いてみようと思います(といってもそんなに分かりやすい話にはならないと思いますが・・・)。
ソナタ形式の曲を聞くときに必ず意識しなければならないこと、それは、第1主題と第2主題が出てくるのだということです。主題ってなんだ?という話になってきますが、メロディーだと思っておけばよいでしょう。
つまり、メロディーが2つ出てくるということです。この2つは全く異なる性格を持っていて、なんなら調(キー)も違います。1つの曲の中で。キーの異なる2つの曲が出てくるようなものです。
ソナタ形式の曲は、
提示部→展開部→再現部
という構成になっています。
なんだか難しい感じがしてきますが、それぞれの意味を考えるとそうでもないことが分かってくると思います。
提示部、ここでは、「この曲で使われるメロディーはこれですよ」というのが示されます。聞く人はここで、これが1つめのメロディー、ここからキーも違うしさっきと全然雰囲気が違うから2つめのメロディーというのをしっかり意識する必要があります。
とにかく最初だけは集中して、この2つのメロディーをしっかり把握するようにします。これに失敗すると、そのあとの曲が単なるメロディーの羅列になってしまうでしょう。
次に展開部が来ます。ここで、問題となるのが、どこから展開部なのか?ということです。これが簡単ではないのですが、最初に出てきたメロディーが変形してでてきたなと思ったら、そこから展開部だと考えると良いでしょう。
展開部は、提示部で示された2つのメロディーを組み合わせて、音をどんどん変形させていくところです。キーもどんどん変わっていきます。最初の提示部はメロディーをしっかりと聴衆に把握してもらうことが目的の部分ですから、そんなに複雑なことは起こらず、むやみにキーが変わることもありません。1つめのメロディーはこのキー、2つめのメロディーはこのキーと、ほとんどはっきりわかると思います。
それが、展開部になるとメロディーの途中でもめまぐるしくキーが変わるようになり、メロディーも1つずつ出てくるだけでなく、2つが組み合わさったり同時に出てきたりします。
提示部でしっかりメロディーを覚えておけば、「ああ、これは1つめのメロディーを変形しているんだ」「2つめのメロディーはあんなに穏やかだったのに、ここでは激しい感じになったな」というように、もとのメロディーがどのように変化したかを楽しむことができます。
そして再現部。こちらは、一番最初の提示部で出てきたメロディーがほとんどそのまま出てきます。「ああ、帰ってきたなあ」という安心感があると思います。目まぐるしく変わったキーも、最初のものに戻ってきます。
提示部では2つめのメロディーでキーが変わったはずなのですが、再現部では変わりません。ここが提示部と再現部の大きな違いです。
つまり、キーを把握する力がないと理解が難しいということになってしまうのですが、今どのキーだというの(私もこれは完全には分かりません)は分からないまでも、最初のキーと同じか違うかだけでも分かると、曲の理解が大きく進むと思います。
だいたいこれ位が分かっていると、長い曲でも飽きずに聞けるようになってくると思います。注意点として、提示部の前に序奏がついたり、再現部のあとにコーダがついたりすることがあります(コーダはつくのがむしろ普通です)。
序奏→提示部→展開部→再現部→コーダ
こんな感じです。親切なコンサートなら曲目解説にこの辺りが説明されていることがあるので、事前に読んで、曲の構成を理解しておくことは大切だと思います。
ということで、コンサートの感想と見せかけてソナタ形式の説明をした記事を終わります。